[オピニオン from CIO賢人倶楽部]

CIOが知っておくべきデジタル技術、「空間情報基盤」「空間ID」とは?

PwCコンサルティング シニアマネージャー 佐々木智広氏

2022年12月12日(月)CIO賢人倶楽部

「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、PwCコンサルティング シニアマネージャーの佐々木智広氏によるオピニオンである。

 1970年代から使われ始めた地理情報システム(GIS:Geographic Information System)は、1995年1月に起きた阪神・淡路大震災をきっかけに国レベルの整備の必要性が改めて認識され、関連する地理空間情報および周辺システムの整備が推進されてきました。

 衛星測位システム(GPS:Global Positioning System)の高精度化もあって、2007年、日本政府は地理空間情報活用推進基本法を制定。これに基づき、地理空間情報を簡単かつ的確に入手・活用できる「地理空間情報高度活用社会(G空間社会)」の実現に向け、同年の第1期基本計画から現行の第4期基本計画に至るまで、さまざまな施策を展開しています。

 このように説明すると、企業ITからは距離のある話に思えるかもしれませんが、そうではありません。昨今のコロナ禍に伴う消費者のライフスタイル/ワークスタイルの変化、それに伴う物流関連の負担増大、さらに言えば地球環境問題や自然災害の深刻化といった社会課題への対応策として、地理空間情報の整備と活用は非常に重要です。今後見込まれる自律運航ドローンや自動運転車の実用化でもカギを握ります。そこで今回は、地理空間情報を巡る状況とその先にある「空間ID」について説明します。

地理空間情報活用進展のステップと3次元空間情報基盤の可能性

 地理空間情報の活用の進展は、以下のように大きく5つのステップに整理できます。当然、ユースケースごとに活用されるデータの種類や目的が異なりますので、進展度合もユースケースによって異なるはずですが、おおむねこの5ステップになります。

ステップ1:地理空間情報のデジタル化(位置や場所の情報を活用するための基盤整備)
ステップ2:地理空間情報の精度向上
ステップ3:複数の地理空間情報の重ね合わせ
ステップ4:地理空間情報のデータ連携による自動化・メンテナンスの効率化
ステップ5:事業・サービスの創出による市場拡大

 ステップ1と2は地理空間情報の整備段階であり、効率性が重視される段階です。そのためユースケースに関連するステークホルダーが協調して推進しやすいステップです。ステップ3以降は、取り組みの成果が競争の源泉となり得る傾向が強いことから、各ステークホルダーが差別化要因を見出すべく取り組みを推進する競争領域に位置づけやすくなります。

 一方でステップ3の段階に至ったユースケースにおいては、それぞれの地理空間情報同士を連携させる機会が増大することが容易に想定されます。そのために必要になるのが地理空間情報同士の連携を可能にすること、つまり3次元空間上の位置を一意に特定する仕組みの定義です。一意と言っても1つの座標のようなものではなく、広がりや構造を持ちます。

 このような仕組みは「空間ID」と呼ばれており、整備に向けた検討が進んでいます。地理空間を特定する空間IDが整備されると、空間IDをキーにしてさまざまな地物・位置の情報を検索・特定したり、何かを自動処理を実現するユースケースが台頭したりするようになります。さまざまなステークホルダーが所有する地理空間情報同士の連携機会も、空間IDによって持続的に拡大することになるでしょう。

●Next:空間ID活用のさまざまなユースケースをどのように具現化していくか

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