[新製品・サービス]

バージョンアップの負担を大幅に軽減 ユーザーにSOA環境への移行を促す

2009年4月9日(木)

ERPアプリケーション・スイート SAP Business Suite 7/SAPジャパン パソコン用OSからDBMS、ERPパッケージに至るまで、数年おきに繰り返されるソフトウェアのバージョンアップは、大半のユーザーにとって悩みの種だ。ERPにSCMやCRMを統合したスイート製品になると、なおさらである。その悩みを解消すべく、SAPジャパンは新製品「SAP Business Suite 7」を発表した。

カスタマイズやアドオン開発が多い場合はもちろん、ほとんどゼロに近くても、ERPパッケージのバージョンアップはやっかいな問題だ。

周辺システムとのインタフェース、データ項目の整合をはじめ、調査・改修を要することが多く、膨大な時間とコストがかかる。それでいて必ずしもすぐに何らかの斬新な機能が使えるようになるわけではないから、ユーザー企業が現状凍結を選択するのは、無理のないことかも知れない。

一方、パッケージ・ベンダーは、これを座視しているわけにはいかない。旧バージョンのユーザー・サポートのための工数やエンジニアの手当てにコストがかかるうえ、新製品に移行するユーザーが少なければ開発コストの回収が遅れ、また新製品の成熟度のペースや熟知したエンジニアの育成も遅くなってしまう。“バージョンアップ問題”の解消は、ユーザーにもベンダーにとっても、喫緊の課題なのだ。

そうした中、SAPジャパンは2月、ERPアプリケーション・スイートの新製品である「SAP Business Suite 7」を発表。同時に今後数年はバージョンアップを凍結し、「エンハンスメントパッケージ」という、OSでいえばパッチに相当する小規模な強化プログラムの配布で機能強化を図っていくことを表明した(図1)。

画像:図1 Business Suite
図1 Business Suite 7では技術基盤を共通化。今後も各アプリケーションのEHPs提供タイミングを同期することで共通基盤を維持する(画像をクリックで拡大)
※EHPs:エンハンスメントパッケージ

Business Suite 7の概要

Business Suite 7は、会計や生産管理などを含むERPパッケージ、「SAP ERP 6.0」とシステム連携基盤である「SAP NetWeaver 7.01」を中核にしたスイート製品である。顧客関係管理システム「SAP Customer Relationship Management(CRM) 7.0」、サプライチェーン管理システム「SAP Supply Chain Management(SCM) 7.0」、購買管理システム「SAP Supplier Relationship Management(SRM) 7.0」、製品ライフサイクル管理システム「SAP Product Lifecycle Management(PLM) 7.0」と、業種別アプリケーション群で構成される。

Business Suite 7を構成するすべてのモジュールは、「SOAの考え方に基づきNetWeaver上でサービスとして動作するので、ユーザーは必要な機能だけを選択して利用できる」(SAPジャパン)。2008年に買収したBIツール、「SAP Business Objects」のポートフォリオ分析機能も取り込んだという。

150超の機能拡張、日本の要求も反映

各アプリケーションの強化ポイントに、見所は多い(図2)。特にERPの機能拡張では、日本のユーザーの意向を相当程度、反映したという。一例が会計システムの機能強化。これまで拡張機能としての提供だった、締め日請求処理といった日本特有の処理を標準機能として盛り込んだ。人事系では、最近の経済状況を受けて、退職・再雇用に伴うワークフロー機能を搭載した。

画像:図2 SAP Business Suite各アプリケーションの強化ポイント

CRMでは、ユーザーインタフェースを刷新している。例えば、画面レイアウトをドラッグアンドドロップにより、ユーザーの好みに合わせて変更できるようにした。「CRMの主な利用者である現場の営業担当者が使いやすいよう配慮した。このような改良は今後、SCMなど他のソリューションにも施していく」(同社)。

このほかPLMでは、部品表や図面を横断的に検索できるようにして検索性を向上し、SCMでは輸送・倉庫管理機能を強化した。SRMではERPとの連携強化による支出分析を充実させた。

エンハンスメントパッケージでバージョンアップをなくす

しかしBusiness Suite 7の特徴は、こうした製品の機能面にだけあるわけではない。むしろバージョンアップを凍結したことの方が、大きな特徴だ。

SAPは2006年に出荷したSAP ERP 6.0(当時の名称はmySAP ERP2005)において、少なくとも2010年末まで大幅なバージョンアップはせず、代わりにエンハンスメントパッケージ(EHPs)を提供することを明らかにした。(1)SAP ERPが提供する基幹業務機能の成熟が進み、大幅な変更を必要としない状態になったこと、(2)その段階でNetWeaver対応、つまりSOA対応が完了し、部分の変更がSAP ERP全体に影響しないアーキテクチャになったことの2点が背景にある。

事実、その後丸3年が経過するが、SAP ERPのバージョンは変わらず、これまでに4度のEHPsが提供されただけである。なおEHPsは個々のアプリケーションの機能強化プログラムであり、ユーザーは選択的に導入できる特徴がある。SAPやオラクルなどが適宜提供している、バグフィックスや法制度の変更対応など向けのパッケージと異なる点に注意が必要だ(これらは通常、システム全体に適用する必要がある)。

その実績のうえで今回、Business Suite 7でも同じ機能強化策を適用することを発表した。アプリケーションスイートのレベルでも、上記(1)、(2)が言えるほど成熟度が上がったことになる。

移行を真剣に考慮すべき時期

今後、バージョンアップの負担が減るとはいえ、恩恵を受けられるのはBusiness Suite 7を導入あるいは移行した企業。SAP ERP6.0も同じである。

米フォレスターリサーチの調査では、米国におけるERP6.0のユーザーは20%に過ぎず、R/3 4.6C、またはそれ以前のユーザーが計42%いる。日本の数字は不明だが、古いバージョンのユーザーは米国よりも多いはずだ。加えて日本のユーザーの多くは、大規模なカスタマイズを実施しており、目下の経済環境を考え合わせると、バージョンアップのハードルは極めて高い。

それでもミドルウェア(NetWeaver)と業務アプリケーション群を一体開発していることによるSAPのSOA対応の充実ぶりは、十分、考慮に値する。「SAPのソリューションは今動いているものだけ。他の業務には広げない」と決めている企業はさておき、最新版への移行を真剣に検討するべきだろう。

ただし、その場合、ユーザー自らが情報収集や導入の可否、そして導入作業を主導する必要がある。コンサルティング会社に丸投げ、あるいは多くを委ねたかつてと同じ轍を踏むべきではない。

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