[イベントレポート]

【SuiteWorld18】ネットスイートの「顧客企業の成長への注力」とその成果

ネットスイートとオラクル、一部製品で競合する両社の立ち位置が明確に

2018年4月25日(水)渡邉 利和

米ネットスイート(NetSuite)の年次プライベートイベント「SuiteWorld18」が開催中だ(4月23日~26日、米ネバダ州ラスベガス)。4月24日午前の基調講演には、米オラクルでOracle NetSuite部門エグゼクティブバイスプレジデントを務めるジム・マッギーバー(Jim McGeever)氏が登壇。ERPを中核としたSaaS型の業務アプリケーションの提供と洗練で、多数の中小企業やスタートアップを含むユーザーの成長に注力する方針を改めて強調した。

 今年のSuiteWorld18のキーメッセージとして掲げられたのは、アメリカンフットボールのかけ声をもじったと思われる「Ready, Set, Grow.」。中小企業やスタートアップを主要ユーザーとする同社が引き続きユーザーの成長(Growth)を支援していくという立ち位置を明確にする意図を込めている。

 ジム・マッギーバー氏(写真1)の基調講演は、製品や技術の詳細な紹介を翌日登壇予定の創業者・CTO(最高技術責任者)、エバン・ゴールドバーグ(Evan Goldberg)氏に譲り、企業の成長のために何が必要となるか、どうやって成長を実現すればよいのかにフォーカスした。

写真1:基調講演を行った米オラクルでOracle NetSuite部門エグゼクティブバイスプレジデントを務めるジム・マッギーバー氏

 冒頭、マッギーバー氏は2017年の企業平均成長率を示した。大企業で6%、新興企業で8%だが、NetSuiteユーザーの場合は17%で、高い成長率を達成しているという。同氏はまた、「Growth is xxx(成長とは)」との問いかけに対して、「Change(変化)」「Evolution(革新)」「Continuous(継続)」「Discipline(原則)」「Focus(焦点)」「Risk(リスク)」「Sharing(共有)」といった言葉を次々と当てはめていき、それぞれの要素がNetSuiteを活用することでどのように対処できるのかという説明を行った。

 さらに、成功したユーザー企業の具体例として、元有名スタイリストという異色の経歴を持つ経営者レイチェル・ゾー(Rachel Zoe)氏や、フルーツフレーバー水や健康関連商品でヒットを飛ばしたヒント(hint)の創業者兼CEO、カーラ・ゴールディン(Kara Godin)氏がゲストとして登壇し、自身の成功体験を語った。SuiteWorldでは用意されたセッションの8割がユーザー企業の講演であり、ユーザー間の交流・情報交換に重点が置かれている。

オラクルとの関係

 オラクルがネットスイートの買収合意を発表したのは2016年7月のことだ。数々の企業を買収で獲得してきたオラクルにとっても最大規模のM&Aだったというが、2年弱を経て、買収による影響がおおよそ整理され、両社の立ち位置が明確になった。このこともSuiteWorld18のトピックの1つと言える。(参考記事:2017年10月開催NetSuite SuiteConnect 2017で語られた両社の関係

 ネットスイートは組織的にオラクルのグローバル事業部門となるが、独立性が維持されている。オラクルのCEO、マーク・ハード(Mark Hurd)氏はビデオ会議形式で基調講演に参加し、会場からの質問に回答した(写真2)。ネットスイートの買収に関する質問には、「投資を行い、さらなる成長を促すために買収することにした」と答え、会場を埋めたユーザーに対して「NetSuiteの事業はずっと継続する」と約束した。

写真2:ビデオ会議システムのスクリーンから会場に語りかけたオラクルのCEO、マーク・ハード氏

 マッギーバー氏は、ネットスイートの事業戦略や製品計画について、オラクルから指示を受けることはないと話した。「現在遂行中のさまざまな取り組みは買収以前から自分たちで計画していたことであり、むしろオラクルに買収されたことで実行スピードが速まるなどのプラス効果を実感している」(同氏)。

 また、非常によく聞かれるという、両社のビジネス面での競合についてマッギーバー氏は、「ユーザーにとってオラクルとネットスイートのどちらが適切な選択かは、ユーザー自身が明確に分かっているケースが大半。実際には問題になることはない」と明言した。日本においても、オラクルに買収されたことでネットスイートの知名度が上がっており、現時点で両社ともに買収の成果を享受できているようだ。

主な会場発表

 製品関連では、「NetSuite OneWorldのアップデート」「SuiteCommerceのアップデート」「SuiteSuccessの強化」「AIへの取り組み」の概略が説明された。

 OneWorldは、現地法人や子会社を設立して海外事業を展開するケースで、異なる言語や制度を併用するための仕組みを提供する。NetSuiteは、共通化された国際化対応のSaaSプ基盤上に、必要に応じて各国向けにローカライズされたモジュールが載る構成となっている。したがって、OneWorldでもライセンスの範囲内で他国向けモジュールを適宜活用できる仕組みになっている。今回発表された最新バージョンのOneWorld 18.2での重点対応国はドイツ、フランス、中国、日本、ブラジル、メキシコの6カ国で、日本のユーザーに向けた今後の対応強化にも期待が持てる。

 SuiteCommerceは、ECサイト構築機能を集約したサービスだ。従来から提供されていたSuiteCommerce Advancedがフルカスタマイズを前提とした機能だったが、現行のサービスはより小規模な企業でも使いやすいように構成されたベースが提供され、「30日以内にオンラインストアを立ち上げられる」(同社)と謳われている。

 SuiteSuccessは、垂直市場向けに最適化されたスターターキット的なパッケージで、現在ではネットスイートの主力サービスと呼べるほどの大ヒットとなったサービスだ。今回は、新たに業種向けパッケージの追加などが行われている。

 そして、AIについては、「クラウドERPでAIや機械学習を活用してインサイトを得たり自動化を達成したりする」という取り組みになる。

 冒頭で示されたNetSuiteユーザーの成長率17%に対し、OneWorldユーザーの成長率は19%、OneWorldとSuiteCommerceを併用するユーザーの成長率は44%だという。同社のサービスを使えば使うほどより大きな成長が達成できるという分かりやすいメッセージである。ユーザーの成長を支援するというネットスイートのビジョンが実際、数字に表れる成果を挙げているわけだ。

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