CIOや情報システム責任者から今もよく耳にする話に”現場の抵抗”がある。筆者もかつてシステム部門でそれを体験した。特に業務改革や経営改革など仕組みが変わることへの抵抗や、社内システムを更新し導入する段階での抵抗は少なからずあった。そんなときにどうすればいいか?今回は体験に基づく現場の抵抗と対処法について書いてみたい。
現場の抵抗とその理由
業務改革にはシステムの新規構築や更新が伴うことが多い。現場の抵抗の要因が業務改革なのか、それともシステムなのかが分かりにくいが、2つの要素から出てくる現場の抵抗の性質は明らかに異なっている。まず業務や経営の改革に伴う現場の抵抗の最大の要因は「不安」だと考えられる。改革の目的やゴールは理解していても、組織が変わる、役割が変わる、人の異動が伴うなどへの、漠とした不安があるのだ。今までやっていた仕事がなくなるかもしれないし、社内のポジションを失うかもしれないといった不安は往々にして経営者や改革実行者に向けられ、批判や反発や愚痴となる。
これに対して、システムの新規導入や更新などに伴う現場の抵抗は少し趣が異なる。今までの仕事の処理プロセスが変わるので新たに覚えなければならないとか、馴染んだ画面操作が変わるとかいったことは不満につながりやすい。業務改革への抵抗に比べれば微々たるものだが、丁寧に対処する必要はあるのでシステム担当者を悩ます要因になる。
これらの共通要素は変化に対する抵抗である。多くの人=多くの現場は、安寧な日々であることや現行踏襲による安定を好む。変化に対する触覚は意外に鋭く、したがって改革やシステム導入に抵抗は付きものである。改革による変化が大きいほど抵抗の程度も範囲も大きくなる。抵抗の強さは改革の大きさを示す指標のようなものだ。むしろインパクトがあった方が改革はやりやすい。
そもそも抵抗が無いようでは改革にはならない
筆者が体験した現場の抵抗の話をしよう。経営トップから「システム費用30%削減」と「間接管理部門の人員の大幅減」というミッションを受けて、筆者は事業部門からシステムの統括に異動した。30%の削減も人員の大幅減も、半端なやり方では達成できない。大胆なプロセス改革とシステム再構築プランを描いて実践し、仕組みを変えるしかない。2ヵ月でグランドデザインとマスタープランを描き、各部門から要員を確保した。こういうことを始めるだけで事業部門も自部門であるシステム部門も取引先のベンダー企業もざわつき出し、理由を探して変革に抵抗しようとする。これは事業部門時代にはなかった新鮮な体験だった。
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