[調査・レポート]

「DX推進指標」レベルを280社が自己診断、結果から浮かび上がる“6つの頂”とは

2020年2月12日(水)佃 均(ITジャーナリスト)

経済産業省が「DX推進指標」を発表し、情報処理推進機構(IPA)がその自己診断結果入力サイトを開設してから4カ月が経つ。20世紀モデルのITシステムから、21世紀モデルないしSociety 5.0対応のデジタルトランスフォーメーション(DX)システムへ──そのための指標に沿って、0から5まで6段階で自己診断してみよう、というものだ。2020年2月現在、自己診断した企業は約280社で、IPAは3月末をめどに全体の傾向を分析して公表する。233社の分析を行った途中経過から見えてきたのは、DXの前に立ちはだかる“6つの頂(いただき)”だ。

DX推進指標は何を目的としているか

 経済産業省が「DX推進指標」を公開したのは2019年7月31日。DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進には「経営幹部、事業部門、DX部門、IT部門など関係する者が現状や課題に対する認識を共有し、アクションにつなげていくことが不可欠」(同省)という問題意識から、各企業が自社におけるDXの推進に関して、簡易な自己診断を行うことを可能にするためのツールである(図1)。

 このとき同省は、「本指標を用いて各社が実施する自己診断の結果は、中立的な組織が収集し、ベンチマーキングを行うとともに、その情報を提供する」という計画も打ち出している(関連記事経済産業省、DXへの取り組み状況を自己診断で可視化する「DX推進指標」を公開)。

図1:DX推進指標の自己診断プログラム(出典:情報処理推進機構)

 その名のとおり、企業がDXを推進するための指標である。ここ1、2年で経産省からこうした施策が次々と示されている。背景には「日本企業のDXの周回、いや3周回遅れ」がある。詳しくは、関連記事「IT予算の8割がシステム維持管理」が依然続き、沈みゆく日本のITユーザー/IT業界)/経産省が「2025年の崖」対策の第2弾を発表─「DX銘柄」と「デジタルガバナンス・コード」を読み解くを参照されたい。

 本稿の主題である「DX推進指標」に戻る。前述の経産省の問題意識から、以下のような構成で指標を立てている。全体像は図2である。

経営の視点
 ●DX推進の枠組み(定性指標)
 ●DX推進の取り組み状況(定量指標)
ITの視点
 ●ITシステム構築の枠組み(定性指標)
 ●ITシステム構築の取り組み状況(定量指標)

図2:「DX推進指標」の構成。大きく「経営の視点」と「ITの視点」に分けられる(出典:経済産業省)
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 一般的に、定量/定数的な指標は正確な回答がしやすいが(表1)、定性的な指標はどう答えていいかわからないことがある。そこで定性指標の中身を見ると、経営の視点では、「危機感とビジョンの共有」「経営トップのコミットメント」「マインドセット、企業風土」「KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)とエビデンス」などが並ぶ。ITの視点では、「IT/DX推進の中期計画」「データの正規化」「システムの棚卸し」「事業部門のオーナーシップ」などが定性指標として挙げられている。

 経産省の説明によると、「定性指標は35項目からなり、現在の日本企業が直面している課題やそれを解決するために押さえるべき事項を中心に項目を選定しています」という。

表1:DX推進の取り組み状況に関する定量指標の例(出典:経済産業省)
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自己診断の平均値は「現状1.42/目標3.06」

 IPAの「DX推進指標 自己診断結果入力サイト」(https://www.ipa.go.jp/ikc/info/dxpi.html)にアクセスすると、まず会員登録を行い、4つのステップで自己診断を入力するようになっている。診断データを入力し終えた企業には、「参考」として、全社のローデータがExcelファイル形式で提供され、IPA側では全社のデータから全体の傾向を分析したベンチマークを策定する仕組みだ(全社ローデータは個社の結果の全てが提出企業に共有されるわけではなく、平均値の実際の数値)。今回を初回とし、同様の分析を毎年1回行うことで経年変化を読み取って行く予定という。

 前述したように診断は0から5まで、6段階のレベル判定がなされる。それぞれのレベルの特性を示したのが表2である。

表2:DX推進指標における成熟度レベルの基本的な考え方(出典:情報処理推進機構)

成熟度レベル 特性
レベル0 『未着手』 経営者は無関心か、関心があっても具体的な取り組みに至っていない
レベル1 『一部での散発的実施』 全社戦略が明確でない中、部門単位での試行・実施にとどまっている
(例)PoCの実施において、トップの号令があったとしても、全社的な仕組みがない場合は、ただ単に失敗を繰り返すだけになってしまい、失敗から学ぶことができなくなる。
レベル2 『一部での戦略的実施』 全社戦略に基づく一部の部門での推進
レベル3 『全社戦略に基づく部門横断的推進』 全社戦略に基づく部門横断的推進
全社的な取り組みとなっていることが望ましいが、必ずしも全社で画一的な仕組みとすることを指しているわけではなく、仕組みが明確化され部門横断的に実践されていることを指す。
レベル4 『全社戦略に基づく持続的実施』 定量的な指標などによる持続的な実施
持続的な実施には、同じ組織、やり方を定着させていくということ以外に、判断が誤っていた場合に積極的に組織、やり方を変えることで、継続的に改善していくということも含まれる。
レベル5 『グローバル市場におけるデジタル企業』 デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル
レベル4における特性を満たした上で、グローバル市場でも存在感を発揮し、競争上の優位性を確立している。

●Next:233社の自己診断結果への分析から見えてくる「DX推進の必須要件」

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