[メインストリートに向かう「B2Bサブスクリプション」]

DX時代、APIエコノミーの下で広がるサブスクリプションビジネス

2020年4月8日(水)二瓶 司(サイオステクノロジー エグゼクティブマネージャー)

デジタル化への対応により、多くの企業がモノ売りからサービス提供へとビジネスモデルの転換を図っている。それに伴い注目を集めているのがサブスクリプション型の料金体系だ。音楽や雑誌の聴き放題、読み放題から自動車の乗り放題まで、さまざまな業種でサブスクリプションを取り入れたサービスが登場している。この流れはB2C領域だけでなくB2B領域にまで広がっている。ここでは主に「B2Bサブスクリプション」サービスをより円滑に立ち上げるのに必要なノウハウ、留意点をITサービスの切り口から解説する。本稿では前段として、サブスクリプションとAPIエコノミーが共依存の関係にあるという視点から、サブスクリプションの拡大がなぜ必然なのかを説明する。

サブスクリプションとリカーリング

 最初に、本連載で対象とするサブスクリプションの範囲(図1)について整理しておく。

図1:「サブスクリプション」の範囲(出典:サイオステクノロジー)
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 狭義のサブスクリプション(Subscription:直訳は予約購読、申し込み)は、「モノやサービスを利用する際に、ある一定期間の利用権として料金を支払う方式」と定義される(図1の赤破線の範囲)。新聞の定期購読やインターネットの定額利用料などは該当するが、電気、水道、ガスなど、使った分だけ支払うかたちの利用料金はこの定義から外れる。また、固定電話や携帯電話のような、毎月の固定料金プラス使った分を支払う料金体系も狭義のサブスクリプションの範囲外となる。

 電気や水道のような、完全定額ではないが継続的な料金体系は「リカーリング(Recurring:繰り返し発生する、循環する)」という呼び方がなされてきた。これから考察する「B2Bサブスクリプション」の世界では、完全定額と完全従量の境界線だけでなく、顧客やサービスごとの料金体系を弾力的に組み合わせていく手法が主流になりつつある。

 そこで、今回は狭義のサブスクリプションだけではなく、これまでリカーリングに区分されてきた範囲も包含して考察すことで、サブスクリプションビジネスを理解する近道となると考えている(図1の青破線の範囲)。

「常時つながり続ける世界」の急拡大と事業領域の重なり

 近年、APIエコノミーが拡大していることはご存じのとおりだ。APIエコノミーについては関連記事いまさら聞けないAPIエコノミー APIの公開でビジネスの拡大を狙うアプローチを参照されたい。

 2010年以降の10年間で起こったのが、これまで総じて個々の領域や業種で閉じられていた情報や知識・ノウハウが、クラウドの発展と共にオープンになり、共有されるような時代への移行だ。

 クラウドをベースに情報共有のインフラが整備されれば、それらを通じて提供されるさまざまなナレッジを活用して、需要サイドからはよりよいサービスを享受したい、供給サイドからはよりよいサービスを提供したい(というよりは、ユーザーからのデマンドによって、よりよいサービスを提供しないと生き残れないようになった)ムーブメントが必然的に起こる。こうして需要サイドのニーズはどんどん膨らむ一方で、供給サイドのヒト・モノ・カネのリソースは限られている。

 このギャップを埋めるために、いかに需要サイドのニーズを満たし、さらに期待以上の水準を超えて競争優位を確保するか。企業がみずからまかなえるリソースが限られている以上、いかに上手に「借り物競争」して提供するサービスの質と量を高めていくかが重要になってくる。これがAPIエコノミーの背景にある(図2)。

 このような状況下で、既存の市場に突然、ディスラプターが登場し、市場の勢力地図を塗り替えるようなことが起こった。また、借り物競争の激化により、「さまざまな機能をさまざまなところから借りているつもりが、実は貸し出し先が同じだった」というようなケースも多々見られるようになる。事業領域がクロスオーバーするようになったからだ。これまでは別のビジネスを展開していた企業が、ある日、突然競合となるケースはいまや珍しくない。

 激化した市場競争を勝ち抜くためには、異なる付加価値、事業領域、ビジネスモデルを、これまでよりも格段に早いサイクルでアップデートし続けなくてはならない。

図2:「APIエコノミー」が台頭した背景(出典:サイオステクノロジー)
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●Next:APIエコノミーで重視すべき2つの要素とは?

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