[企業情報システムのあるべき姿]

次世代ICT技術をどう取り込むか

日本企業の視点からSoRとSoEを検証する

2015年5月13日(水)

デジタルビジネス時代を支える企業システムは、SoRやSoEなど、その特性で大別した上で、それぞれに最適な開発手法や基盤を採用することが欠かせない。ここでは、日本企業の視点から、あらためて全体最適なデザインを考えてみる。

 企業が構築・運用する情報システム群は、日々の業務処理を支援するSystemsof Record(SoR)と、モバイルやIoT(Internet of Things:モノのインターネット)などを生かして人やモノに関与するSystems of Engagement(SoE)に大別できる。とは言っても、SoRとSoEという分類に違和感を持つ読者は少なくないかも知れない。例えば、こんな疑問があるのは当然だからだ。

 「我々が構築してきた生産管理システムは、単に情報を記録したり決まった手順を繰り返したりするシステムではない。顧客の様々な要求に応じられるよう、柔軟な生産手配を可能にしている。これこそエンゲージメントではないか」

 その通りだが、それでも筆者らは、SoRとSoEのように、システムを特性で分類し、それぞれに最適な開発手法やシステム基盤を採用することが、情報システムを高度化していく上で欠かせないと考えている。

 先の生産管理システムであっても、それを拡張し、生産設備の稼働状況をモニタリングするM2M(Machine toMachine)の仕組みを実装することは可能である。つまりSoRに分類される生産管理や販売管理などのシステムに、機械の稼働を監視するIoTや顧客との関係を強化するモバイル機能を盛り込めば、他社との差異化は図れる。しかし「屋上に屋を重ねるかのように、システムを改変/拡張するべきではない。SoRはSoRとして進化させ、人やモノへの新たな関与はそれに適した別のシステム=SoEとして開発するべきである」──。これが重要だと筆者らは考えている。

 ではなぜ、そのように考えるのか。多少の重複をお許しいただいた上で、以下で日本企業の事情に合わせた形でSoRとSoEを改めて考察する。その中で全体アーキテクチャ、すなわちグランドデザインを整備することの重要性と利点を改めて明らかにしたい。

SoRとSoEを改めて考える

 SoRやSoEといったシステム分類は日本のICT産業にはない。海外で提唱された概念である。これを慣習の異なる日本企業の情報システムにも、そのまま当てはめられるだろうか?まずこの疑問に触れつつ、日本企業の情報システムの特徴を踏まえた、SoRとSoEの捉え方について述べたい(SoRとSoEの特徴は「デジタルビジネス時代の情報システム像」を参照)。

表 Systems of RecordとSystems of Engagementの比較
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 SoRを直訳すると「記録のためのシステム」となる。標準プロセスを重視し、例外を許さない海外企業のシステムで考えると、確かにしっくりくる。顧客と自社は対等であり、例えば製造業は契約に基づいて生産し、納品する。契約書(発注書)がないまま、生産に取りかかることはない。これは海外でERP(EnterpriseResource Planning)システムが普及している大きな所以でもある。

 日本から見れば融通が効かず、担当者の知識や経験が詰まった業務処理にならないようにも見える。だが、顧客側も同じ認識なので在庫計画を立てた上で発注をかける。こうしたビジネスモデルが前提になるため、プランニングやビジネスインテリジェンスが発達しながらも、業務システムそのものは記録を主体としたシンプルなものになる。

 一方でビジネス競争力を高めるため、もしくは最新のI C Tを生かして新たな事業を創造するためにSoEが登場する。「顧客(人や企業)、モノ、コトに対して積極的に関与するシステム」と訳せるだろう。顧客の状況や考えを先回りして理解し、最適なタイミングで必要なコトを提案したり届けたりすることは競争上、必然性が高い。ICTの進化に伴い、数千万人の消費者に映像をオンデマンド配信するような、従来は存在しなかったビジネスも可能である。

 しかし成功は容易ではない。主導権は消費者や取引先にある。膨大な情報からニーズや変化をとらえ、何よりもスピードを重視してサービスを提供し、常に変化させていく。そんなスタイルが欠かせない。このようなビジネスを支えるICTの特性を考えると、SoEに属するシステムは従来のSoRとは別に実装し、必要に応じて連携させた方が確かに合理的である。

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