[真のグローバルリーダーになるために]

【第48回】“卒業”の概念がない塾こそが重要

2016年11月25日(金)海野 惠一(スウィングバイ代表取締役社長)

香港での鉄道カードシステム構築案件を落札した日本ITCソリューション。それを祝う食事会で課長の佐々木は高橋社長にグローバルリーダー育成の課題を挙げ、社長に自社の育成策の見直しを決断させた。閉会後、佐々木は事業部長の三森を顔なじみの銀座のバーへ誘った。

 銀座五丁目の路地裏にある「百楽門」はいつも満員だが、佐々木と三森が訪ねたその日は、ちょうど隅の2席が空いていた。

 「やあ、ママさん。久しぶり。今日は上司を連れてきたよ。紹介します。三森事業部長です」

 「三森さん。初めまして。由貴です。よろしくお願いします」

 ママの高田由貴は、いつものように愛嬌のある笑顔で三森に挨拶した。

 「こちらこそ。それにしてもママさんは、えらく美人だね」

 確かに、三森が言う通りだった。いつもなら彼女目当ての客が一杯で、なかなか店には入れない。今日は運よく空いていた。2人は適当につまみと飲み物を注文し、隅の席にくつろいだ。この店にはカラオケがないので、話をするにはいい場所だった。佐々木が三森に言った。

 「今日は社長にグローバルリーダーの要件を話ししましたが、部長はどうお考えですか?」

 「佐々木さんの言う通りですね。我が社はいよいよアジアに出ていかざるを得ない状況にあるけれど、あなたのような人材がいないことに最近気がつきました。企業買収とか海外への投資は散々やってきていますが、人材に対しては無頓着だった。社長はアメリカの大学院を出ているし欧米との関係も持ってはいるが、会社の中は全くの日本企業です。

 私も佐々木さんが通っている山下塾の木元塾頭とは何度か会食していますので、彼が訴えている内容はよく知っています。しかし、我が社の役員や人事部には英語ができる人がいないから、山下塾での人材育成のポイントは分からないでしょう。

まずは山下塾の支部を社内に立ち上げたい

 なので私が社長と相談し、社内で幾人かを選定して山下塾の支部を作ろうと思っています。山下塾に直接送り込めれば良いのですが、山下塾での英語のレベルについていける人材が現状ではほとんどいません。まずは支部を作って、そこで教育をしたらどうかと思います。支部の中でレベルが上がってきた人材を山下塾に送ったらどうでしょう。とりあえずは、そうしたレベルの人材を20人ぐらい集めて、社内でグローバルリーダーの研修を実施したいですねか」

 三森は佐々木に彼の考えを述べた。

 「そうですね。私も全面的に三森事業部長のお考えに賛成です。是非、協力させてください。香港のプロジェクトが始まると私も日本にいないことが多くなりますが、研修にはスカイプで参加します。プログラムの中身は山下塾の木元塾頭と相談して考えましょう。彼のところにはリベラルアーツの科目が50セッションもありますから、幾つかを選べば年間プログラムが作れます。孫子の兵法とか日本の精神についても、そのプログラムに織り込みたいですね。

 山下塾の支部のように運営するのも良いと思います。部課長は時間の融通がなかなか利かないと思うのですが、平日の夜に山下塾に通うとすれば2時間ぐらい時間が取れません。支部として社内で運営すれば、昼間にしっかり勉強できますね。月2回ぐらいを考えたらどうでしょうか。大学院でしたら卒業ということがありますが、継続した経営幹部育成の場と考えれば良いと思います。そのうえで毎年、山下塾に行けるレベルの人材を選別して山下塾に送り込むわけですね」

 「それです。では、まずは私と経営企画部の布施部長の2人で、山下塾に出て様子を見てみましょう。木元塾頭には私から電話してみます」

 その後も2人は、山下塾の支部作りについて「百楽門」で議論した。ママの由貴は、いつものことながら、佐々木の真面目な性格には呆れていた。彼らは10時過ぎまで、酒の肴にグローバルリーダーの夢を語り合って帰って行った。

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