[マイ・オピニオン ITを巡る私の主張]

ICT改革でさらなる飛躍へ―求められる、経営トップやCIOの意識改革―(中編)

2011年10月4日(火)

日本では20年ほど前から、CIO(最高情報責任者)の必要性が訴えられてきた。それを受け、CIOを設置する企業が増えたと言われている。だがCIOが自らの役割やミッションにふさわしい機能を発揮しているのかというと、まだまだ課題が多い。システムを担当する役員を「CIO」と呼んでいるだけの状態が長く続いており、その役員も2年もすれば変わってしまう、というのが現状だ。

CIO不在企業がほとんど

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は、日本企業におけるCIOの有無を2000年から毎年調査している(図3)。調査結果からもわかるように、CIOが存在する企業は、売り上げ1兆円を超える大手でさえ2割程度である。恐らく兼務も多く、専任のCIOは少ないだろう。兼任CIOの業務はやはり「本業」がメインであり、ICTは副次的なものだ、と捉えている人も少なくない。中堅/中小企業に目をやると、システム管掌の役員が存在するところは圧倒的に少なく、この状況はここ数年あまり変わっていない。つまり、実質的な業務はシステム部門長に委任し、ICTの企画/戦略立案やシステム行政全般についても、結果的にシステム部門長の提案や意見を会社が微調整して追認、と言うスタイルになっている。筆者の知っている数十社の実態とも良く符合する。

図3 CIOの設置状況

ここから見えてくることは、日本企業のICT改革に対する重視度や真剣度は今ひとつ、ということである。これは前項でも述べた、トップや経営層の認識の問題にもつながってくる。企業価値の一層の向上には、進化するICTの活用が最も有効な方策の1つだということを、否定するトップはいない。ただ、トップやCIOが主導的に権力や権限を発揮し、システムの開発やマネジメントを実施しているかというと、必ずしもそうはなってない。ICTの活用は重要だと認識しているが、本気度や実行度は低い―。それが実態なのである。このことは、会社の長期計画や社長方針にICTテーマがないことにも関連している。CIOの役割に関する書籍やメディア、あるいはセミナーやイベントを通じた啓蒙の機会は増えているものの、CIOの影響力やシステム部門の比重について顕著な変化は見られない。

苦闘するシステム部門長

ICTによる業務改革への期待を背負ったシステム部門長や責任者の苦労は、相変わらず大きいようだ。社内での比重が低く、小さな組織や権限しか持たない情報システム部門は、複数組織にまたがる業務の見直しや大規模なシステム化を主導するには限界がある。改革は現状の見直しである。人は基本的に保守的であり、自分の業務やそのやり方、組織、権利を守りたがる。改革の対象領域が広がり、関連部門が増えるほど、抵抗勢力は多くなる。これを打破し、業務やシステムの改革を実現するには、リーダーの強い意志だけでは足りず、権力や権限が必須となる。この点で、“非主流部門”としての宿命的限界を感じるシステム部門長は多いはずだ。

経営会議で承認された案件といえども、作業段階では簡単にことは進まない。当初狙っていた踏み込んだ改革ができなくなることもある。要件が決まらなかったり、仕様変更や機能追加の発生で実施スケジュールが大幅に伸び、多額のロスコストが発生することもあるだろう。多くの費用を投入して年単位で進めてきたシステム開発が、結局実働に至らずに多額の損失を出してしまった実例を何件も知っているし、メディアに報道され話題になることもある。システム開発の失敗による年間の総ロスコストを正確な数字として把握している人は恐らく誰もいないが、膨大な額になるはずである。この責任は一般的に情報システム部門に向けられ、経営層や業務部門から批判の目にさらされる。だが、最も批判されるべきは経営層や業務部門の責任者であるはずだというのが、私の考えだ。こうした事態を招くのは、彼らがICTを重要マターとして本気でマネジメントしていないことの裏返しだからである。

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