[スマートウェアラブルデバイス最新動向]

4タイプ分類でスッキリわかる、ウェアラブルデバイスの最新動向

2014年4月2日(水)大元 隆志

眼鏡、腕時計、コンタクト……。さまざまなタイプの“ウェアラブルデバイス”が注目を集め始めている。マニア向けガジェットと見ることなかれ。凝縮された最新テクノロジーは、今後のビジネスや、企業ITとの連携を考える上で、なにがしかの示唆を与えてくれるだろう。本稿では、ウェアラブルデバイスの“今”を詳しく見る。

 ウェアラブルなコンピュータはかなり前から存在する。詳しくは別の記事で述べるが、16~18世紀に発明された機械仕掛けのものもあれば、2000年前後にブームを呼んだものもある。今日、注目を集めているのは、スマートフォンやクラウドとの連携を前提としたものだろう。

 これまでのウェアラブルなコンピュータと区別するため、ここでは、スマートウェアラブルデバイスと呼ぶことにしよう。現在のスマートウェアラブルデバイス市場は大きく四種類のカテゴリに分類することができる。

図:スマートウェアラブルデバイスは大きく4つのタイプに分類できる
図:スマートウェアラブルデバイスは大きく4つのタイプに分類できる

 以下、各タイプの特徴や、代表的な製品、今後の課題などをみていこう。

A. アクティビティ・トラッカー(市場形成の要)

写真:ナイキのアクティビティ・トラッカー
「NIKE+ FUELBAND SE」

 ダイエットやスポーツの活動量を計測するデバイスである。代表的な製品として、「NIKE+ FUELBAND SE」や、「Fitbit One」、 「UP by Jawbone」などがある。価格も1万円前後と比較的入手しやすい。

 従来の万歩計とは異なり、単に歩数を計測するだけでなく、ジョギングやウォーキング、水泳といったスポーツの種類を判別し、運動量を計測することが可能だ。クラウドサービスと連携し、移動距離を可視化したり、友人と競争したりする機能もある。運動のモチベーションを維持させる工夫を凝らしている。

 高齢化が進む日本では健康へのニーズは高まっていくだろう。潜在市場が存在している点も魅力的だ。矢野経済研究所の調査によると、従来型の歩数計・活動量計の2011年の国内販売台数は400万~500万台。成長が期待できるデバイスの1つだ。

 最大の課題は認知度。アクティビティ・トラッカーは、グーグル・グラスのような派手さがないため、市場での認知獲得が課題であった。しかし、携帯キャリアが取り扱いを開始したことで状況は好転しそうだ。

 例えば、ソフトバンクは、ワイヤレス活動量計「Fitbitシリーズ」を使った健康支援サービス「ソフトバンクヘルスケア」を開始した。また、NTTドコモとオムロンヘルスケアは、ドコモ・ヘルスケアを共同出資で起ち上げ、「ムーヴバンド」と呼ぶ製品を発売している。

B. スマートウォッチ(市場の開拓役)

写真:グーグルは2014年3月に「Android Wear」と呼ぶ、ウェアラブルコンピューティングプラットフォームを発表した
写真:グーグルは2014年3月、「Android Wear」と呼ぶ、
ウェアラブルコンピューティングプラットフォームを発表
写真:ソニーのスマートウォッチ「SmartWatch2 SW2」
写真:ソニーのスマートウォッチ
「SmartWatch2 SW2」

 これから市場が立ち上がると期待されているのが、スマートウォッチだ。グーグルが、ウェアラブルコンピューティングプラットフォーム「Android Wear」を発表し、まずスマートウォッチからラインナップを充実させ、今年後半からAndroid Wear搭載のスマートウォッチが発表される予定だ。

 現在発売されているスマートウォッチの主な機能は、スマートフォンと連携し、受信メールやSNSの更新通知を表示させるというものだ。大手家電メーカーが相次いで製品を投入している。代表的なものとして、スタートアップ企業の「Peeble」や、ソニーの「SmartWatch2 SW2」、サムスンの「GALAXY Gear」がある。現在の製品価格帯は1万5000円から3万5000円程度。

 このカテゴリの製品の課題は、「用途」だ。アクティビティ・トラッカーと異なり、「スマートウォッチでなければならない」という必然性が今のところ感じられない。わざわざ新しくデバイスを身に着けてまで、受信メールやSNSの通知を知りたいと考える人はそう多くはいないだろう。

 紛失しにくい性質を活かして、身分証明の機能を持たせてはどうかという期待もある。この特性を活かし、あらかじめ登録したスマートフォンと一定距離離れると振動し、紛失を予防する機能を持った機器もある。これらの用途は確かにあれば便利だが、必須というほどではないというのが正直な感想だ。

 デザインも大きな課題だ。時刻を知るだけなら、スマートフォンで事足りる。むしろ、腕時計は、ファッションアイテムやステータスシンボルとしての側面が強い。そうした箇所につけても恥ずかしくない製品が登場するかが普及の鍵だ。

 筆者の周りにはスマートウォッチを利用している友人が何人かいる。「恥ずかしい」という感想をもらす人も少なくない。例えば、あるメーカーのスマートウォッチは、メール着信時にディスプレイが発光するのだが、これがかなり目立つ。10代の学生なら許容できるかもしれないが、30代の男性が持つのは少しつらい。時計としては「おもちゃ」のように見えてしまう。

 こういった点を改善するため、ルイ・ヴィトンやブレゲなど、ファッションや時計の高級ブランドと提携するのも1つの手だろう。インテルは高級ファッションブランドとの提携を進めている。

 この「用途」と「デザイン」を解決するのではないかと期待がかけられているのが、今年発売が噂されているアップルの「iWatch」と呼ばれるスマートウォッチだ。既に日本でも商標登録がされていることが確認されている。果たして、どんなデザインや機能用途を提案するか。

 iWatchによってスマートウォッチが生活者に受け入れられたなら、多くの人が利用している「時計」という市場だけに、ポテンシャルは高い。

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